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 コリンズ教授のコラム
スペースシップワンとANSARI X PRIZEの歴史的意義

 

人々の中にはANSARI X PRIZEの9月29日の スペースシップワンの飛行計画がそれほど重要ではないという人もいます。
しかし、私たちはこれを歴史的に非常に意味のあるものだと信じています。
その大きな理由の一つが「コスト」です。
スペースシップワンプロジェクト全体には約2000万ドル(約22億円)のコストがかかりました。
22億円とは、アメリカ宇宙局NASAがランチの前までに毎日費やしている費用、 又は日本の宇宙局であるJAXAが3日間で費やしている費用程度のわずかなコストです。

2002年、スペースシップワン(SS1)の開発者であるバート・ルータン氏は商用のSS1の 飛行の価格が乗客一人当たり880万円程度になると見積もりました。
翌年の2003年には、その価格は220万円以下に下げることができると発表しました。
しかし、今年6月21日にSS1で民間初の宇宙飛行を達成した後には、彼の見積もりは なんと乗客一人当たり70万円まで下がりました。
この価格は、1961年にアメリカ人 アラン・シェパードが米国で最初に 宇宙へ行った時に使われたロケットの費用の1,000分の1以下の価格です。

また、スペースシップワンは、50年以上の宇宙航空技術が目覚しい進歩を遂げていた ことを明らかにしてくれました。
スペースシップワンはわずかに4回の動力テストフライトにより宇宙へ到達しました。
わずか数ヶ月間で、1回目をマッハ1到達、2回目にマッハ1.5を達成、3回目には 高度60kmまで到達し、6月21にの4回目にはついに高度100kmの宇宙へ到達したのです。
これらの記録は実は、およそ50年前に、すでに米国と旧ソ連で達成されていましたが、 当時はこれらの情報は冷戦中のためほとんど公開されませんでした。
50年前の当時、多くの様々な種類の宇宙機が開発され、何百回ものフライトに何年も 費やしました。
その結果、数名のパイロットが尊い命を犠牲にしたこともありました。

2001年、デニス・チトー氏が国際宇宙ステーションへの宇宙旅行を楽しみ、 地球周回軌道への旅行へはロシアの「ソユーズ」ロケットを使うことが最も安い方法で
あることを示しました。
しかし、驚いたことにこのロケットはガガーリンが1961年に人類初の宇宙飛行を成し 遂げた時に使用したロケットと同じものなのです。
米国、ヨーロッパ、日本といった宇宙局は百兆円規模の予算で宇宙開発を 行ってきましたが、残念ながら宇宙飛行へのコスト削減については達成していません。
このことと、今回のSS1の開発は、ガガーリンの宇宙飛行以来開発された新しい技術と 十分な費用を使うことによって、宇宙飛行のコストを削減できる技術を開発できる 素晴しい潜在能力があることを示しているのです。

SS1やバートルータンだからでき、宇宙局ができないのではなく、 宇宙局がそのために十分な活動をしていないだけなのです。
もしも、宇宙旅行サービスの為の活動をすぐにでも始めていたのなら、 準軌道(弾道)の宇宙飛行サービスは1970年代前半のアポロ計画の時にも、 開始することができたでしょう。
そうしていれば、軌道への観光や軌道上の宇宙ホテルサービスは1980年代には 開始されていたかもしれません。
そして、21世紀の私たちは、今よりもずっと宇宙が身近でより豊かな社会となっていた ことでしょう。

最近、欧米の政界の長老たちは「21st Century Resource Wars(21世紀の資源戦争)」 に関するスピーチを行いました。
彼らは、地球上の資源が少なくなるにつれて、ほんの一握りの先進国が自分たちの国の 生活水準を守る為に、膨大な人口の自分たちのより貧しい国と戦争を行うだろうとの 悲観的な予測をしました。
しかし、私は、地球外の宇宙の無限の資源を使うことができれば、 この地獄のような未来予想図とは完全に異なる明るい未来となると考えています。

月、彗星、及び小惑星に存在する無尽蔵の鉱物資源、半永久的とも言える 太陽エネルギー、宇宙空間や外惑星に広がる無限の居住空間・・・それらはすべて、 地球の人々の無限の経済成長を可能にするものなのです。
しかもそれは、裕福な一部の国のためだけでなく、 すべての国々と人々の為のものとなるのです。

各メディア、報道機関によって報じられる9月29日の出来事は、 確実な投資さえ行われれば、民間が政府のこれまで宇宙局が使ってきた予算よりも よりもはるかに少ない費用で再使用型の宇宙機の開発を達成することができることを
世界中に知らしめることができるでしょう。

日本においては、JAXAの「RVTプロジェクト」が5年間でわずか1億円だけの研究費を 与えられただけでしたが、これまでの研究成果により液体水素を用いた垂直離着陸式の 再使用型ロケットとして世界をリードできるだけの素晴しい技術があり、 垂直離着陸型の宇宙船で世界を導くことができる可能性を持っています。
JAXAの1年間の予算のち、わずか数%の予算が得られるだけで、 RVTチームは準軌道用宇宙旅行サービス 「宇宙丸号」の基礎となるRVT宇宙船を設計し、 開発からわずか3年で宇宙飛行を実現させることができるでしょう。
そして、5年以内に、一般の人の為の準軌道用宇宙船 宇宙丸の運行ができるように なるでしょう。
さらに、その後は国際的なプロジェクトとして10年以内に「軌道用」の一般向け 観光用の再使用型宇宙機を開発し、日本ロケット協会が提案した「観光丸」の開発を 実現することができるかもしれません。
これら全ての開発には、欧米や日本の宇宙局のために納税者が1年間に収めている 200億ドル(2兆円)すらかからないコストで実現できるのです。

「宇宙開発競争」という言葉は旧ソ連と米国との間の宇宙局間の戦いを指す言葉でした。
しかし、これからの「宇宙開発競争」の持つ本当の意味は、宇宙市場でお金を稼ぐ競争、 すなわち経済活動のことを指す言葉となるべきです。
競争とは、宇宙旅行事業者が顧客を獲得する為にさまざまな技術やサービスを 開発していくことを意味するようになるべきです。
宇宙旅行は世界中に、何百万人のための新しい雇用のチャンスを創り出し、 現在の航空産業のような主要な新産業の一つとなることができます。
また、宇宙旅行のための費用を大幅に削減することによって、宇宙という新しい フロンティアを多くの人に開放することでしょう。

準軌道宇宙船の旅客便の始まりは、真の宇宙時代の始まりとなるのです。
宇宙へすべての人が訪れ、生活する場となるのです。
--ANSARI X PRIZE が何よりも重要なことは、宇宙時代の始まりを告げることなのです。

パトリック・コリンズ

 
 
 
   
 

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